とんとん、とんとんと調子よく階段を降りていたとき、
               足を止めずにはいられない状況になった

               とうとう、現れた
               天敵である跡部景吾が

               腕を組み、偉そうに鼻を鳴らすヤツの仕草に跳び蹴りをくらわしてやりたい衝動に駆られた










               
跡部からの条件










               「来たか。あんまり遅いんで、お前んとこの兄貴にでも止められてるのかと思ったぜ」
               「お蔭様で。逃げ出すような性格は持ち合わせてませーん。…へっ」
               「お前…数話前と性格変わってるぞ」


               頭でも打ったか?と嘲笑するヤツにアメフトタックルをかましてやりたい
               でもそこは我慢我慢!


               「それで、試験ってどんなのやればいいんですか?跡部ぶちょー候補」
               「…可愛くねぇ女だな。基本的には面接だ。
                俺と部長と榊監督の三人で行う」
               「…何だ、アンタもいるのか」
               「あーん?不満なのか?」
               「う…、あ、いえいえ。光栄のいたりですよー」
               「………」
               「部室でやるんですか?」
               「あぁ。移動するぞ」


               あとを慌てて追った
               男と女の違いのせいかもしれないけど、歩くのが早い
               ちょっとは気遣いというもんを持って欲しい…
               階段を降りて校庭を歩いている頃には息がきれて、よれよれ走りになっていた


               「待…っ」
               「あぁ?…そこ、段差あるから気をつけろよ」
               「ぎゃあっ!」
               「……言ったそばからかよ」


               どでん、と鈍い音の後、痛みが腰に走る
               めくれあがったスカートを慌てて押さえ、立ち上がろうとすると手が差し出された
               次いで、モロに見てしまった端正な顔立ち


               「ほら」
               「………っ。1人で、立てますっ…!」


               手を振り払って、スカートの砂埃を払った
               あんなに綺麗な顔を近くで見たから…、何となく落ち着かない
               それを隠すように先陣を切って、テニスコートへ向かった
               落としてしまった紙に気づかず


               「あん?……これは!おい、宍戸妹」
               「はい?」
               「これを、どこで手に入れた」


               榊先生から貰ったマネージャーの推薦書を持っていた
               驚きが入り混じったような表情を浮かべていることから、価値のある紙だと改めて解る


               「榊先生から…」
               「何?……そうか。なら、話は変わってくる。来い」
               「ちょ、痛い…っ!」


               強引に腕を引っ張られて、テニスコートを通り抜け、部室に入れられた
               中には榊先生とテニス部員の二人が座っていた


               「どうした、跡部」
               「榊監督。一つお伺いしたいことがあるんですが。
                彼女の名前をマネージャー推薦書に書かれましたか?」
               「あぁ。私は、面接をするまでもなく彼女がマネージャーにふさわしいと思った。
                だからそうしたまでだ」
               「…跡部、俺もそのことについて監督から聞いたよ。
                俺も、彼女がマネージャーで良いと思う。
                彼女には、関口くんと一緒にマネージャー業をこなしてもらって、
                主に正部員と、準レギュラーのお世話をお願いしたいと思うんだ」
               「部長…」


               部長と呼ばれるその人は、周りが榊先生と跡部だからということもあるかもしれないが、
               この部屋の中で地味な雰囲気を醸し出している男No.1だった
               優しそうな顔と、跡部部長候補とは全く反対の話し方
               それらのことから、氷帝の部長というレッテルとはかけ離れていると思えた


               「何も決まりという訳ではない。気に入らないようならば、課題を出してもいいぞ、跡部」
               「わかりました」
               「課題?」
               「本来、マネージャーは出された課題をこなすっていう決まりがあるんだ。
                その課題がクリア出来なかった場合にはマネージャーを落とされるんだよ。
                まぁ、実質的には課題をこなすまで仮マネージャーといったところだね」
               「……そ、そうですか」


               これは本当に中学校の部活なのかと疑いたくなった
               部長さんの口ぶりや榊先生の態度から言っても昔からそうしてきたっぽいし…
               跡部部長候補にはマネージャーとしても、仮マネージャーとしても認めてはもらえそうにない
               この数日間で自分がいかに跡部に失礼なことをやってきたかが今になってわかった
               今すぐ帰れ、か。もしくは到底出来そうにない課題を言われるか。
               重苦しい雰囲気に、息をのむことさえ許されない行為のような気がした
               跡部部長候補の様子を伺うと、ばっちり目が合ってしまい、慌てて視線をそらした


               「宍戸、俺から課題を出す」
               「は、はい…っ!」


               良かった…!
               すくなくとも今すぐ帰れじゃなかった…!
               嬉しさと、驚きとが混じりあって、ゆっくりと顔を上げた
               蒼の瞳にぶつかる


               「お前には、明日から部活で雑務をこなしてもらう。
                その中で、マネージャーとして相応しい働きをし、部員からマネージャー推薦書を貰ってくること。
                九人分もらってこい。九人のうち二人は正レギュラーであること。これが条件だ。
                三ヶ月以内に課題をこなせば正マネージャーとして認めてやる
                三ヶ月以内に出来なかった場合は仮マネージャーだ」
               「……そんなのっ…!」


               出来るわけない
               冗談じゃない
               でも、ここで断ったら、終わり
               あたしの、負け

               この夢を諦めたくなくて
               屈したくなくて
               全てを、閉じてしまいたくなくて


               「わかりました。やります。やってやります!
                その代わり、絶対にマネージャーにしてくださいよ」
               「俺は言ったことはちゃんと守るぜ。
                それから、随分強気な態度でいるが、まずそれを改めない限りお前の未来はねーぞ」
               「わ、わかってます…!」


               痛いところをつかれ、反論は出来なかった
               三ヶ月以内に、九人のマネージャー推薦書
               やってやろうじゃん

               お兄ちゃんと一緒にテニス部で兄妹仲良く
               昼間は授業で会えないから放課後だけは一緒にいたい

               どんな課題でも、どんな課題だろうと…


               「言っておくが、このマネージャー制度は今年からだ。
                あまりにハードなマネージャー業に耐えられないって奴が多くてな。
                お前は、言わば実験体だぜ?」


               前言撤回
               この課題はかなり、超絶に、とっても前途多難っぽいです。















               あとがき
               跡部夢ですね、これ。
               やっと、序盤が終わりました。
               これからは各キャラのルートに入っていくと思います。
               宍戸兄貴の話を交えつつ(笑)